世界宗教の社会学入門 第9回 (2002/11/28) 

カトリックとプロテスタント


テキスト:橋爪大三郎「世界がわかる宗教社会学入門」p. 77-100

1. カトリックとは
最も合理化された教会キリスト教です。カトリックは教会の力(カリスマ)によって人は救われると教えます。社会学的に「教会」とは宗教的制度団体を言います。制度団体が合理化されるとヒエラルキー(階層)を形成し、頂点に支配者を持つようになります。カトリックは頂点に決して間違いを犯さない教皇(法王)を仰ぎ、聖職者は権威を持ち尊敬を受ける「身分」として平信徒(大衆)と分け隔てられるようになります。宗教的「達人」(修道士や聖職者)は聖者として「大衆」の崇拝の対象となります。大衆が要求する呪術はミサやサクラメントなどの儀式(呪術的操作の洗練化)として提供されます。
2. プロテスタントとは
カトリックに対する宗教改革運動(ルターやカルヴァン)によって成立した、世俗内救済を教えるキリスト教です。プロテスタントは修道院(世俗外救済)を廃して世俗内の労働(天職)を重じ、教皇の権威を否定して聖書の権威を重んじ、儀式でなく説教を中心とするキリスト教です。プロテスタントはルター派(信仰のみの救い)、カルヴァン派(預定による救い)、セクト派(救われた者だけの集会)の3つにタイプ分けできます。
3. ルター主義とカルヴァン主義
ルターは救われるためには信仰だけあれば良く、善行は必要ないと唱えました。一方、カルヴァンは人が救われるか否かは生まれる前から神が預め定め計画によって決定されており、人間の側の一切の意志も努力も救いには無関係と唱えました。この信仰のみのルター主義と預定説のカルヴァン主義は、まったく違った社会行為へと帰結しました。ルター主義は救いの確証を神秘的な神との合一という感情状態に求めました(世俗内神秘)。一方、カルヴァン主義は救いの確証を禁欲的な隣人愛の実践に求めました(世俗内禁欲)。神秘的な救済を求める人は自らを神の恩恵を受け入れる「容器」と自覚します。一方、禁欲的な救済を求める人は自らを神の命令を行う「道具」と自覚します。ルター主義の世俗内神秘は「現世順応倫理」を生みだし、カルヴァン主義の世俗内禁欲は「現世変革倫理」を生み出しました。
4. エートスとは
倫理的生活態度のことを言います。単なる教えとしての倫理ではなく、実際の行為に反映されている倫理的志向や倫理的状態をエートスと呼びます。社会学の対象は倫理的教えでなく倫理的社会行為(エートス)です。禁欲的プロテスタントのエートス(合理的倫理的生活態度)は近代資本主義経済を生み出す決定的一因でした。特に預定説によって救いの確証(プレミア)が倫理的行為(実践)にかけられたカルヴァン主義の人たち(長老派、改革派、ピューリタン)は合理的エートスを生み出すこととなりました。